【北新地ふじもと】大阪・北新地
先ごろ、北新地の「西洋料理店ふじもと」が移転して、「北新地ふじもと」としてオープンした。藤本直久シェフは東京の帝国ホテルやホテルオークラ神戸で腕を磨いたフランス料理の料理人だが、今回店名から「西洋料理」という名称を消した。様々な出会いから、西洋料理という枠に縛られずに、もっと自由に料理を表現したいと思うようになったという。
藤本シェフは、良い食材を求めて生産者と直接付き合ううちに、彼らをパートナーとして、彼らの食材を最大限生かした料理を作ろうと決めたのだ。店内は円形のカウンターに8席のみ。カウンターの向こうでは、藤本シェフと息子で料理人の祐太さんが料理を作り、生産者のことや料理への思いを説明して供される。私がいただいたコースから印象的だったものを紹介したい。
まずは「チキンナカタ」の紀州うめどりと「三浦農園」の野菜のせいろ蒸し。
もも肉はポワレにして表面をカリッと焼き、玉ねぎはホイル焼きしてから「湯浅醬油」の金山寺味噌とともに、内側は竹製で外側はメラニン製の蒸し器で目の前で蒸しあげる。やわらかくて旨みのある鶏肉と甘みたっぷりの野菜を金山寺味噌がまとめて、キリッと冷えた「福寿」(神戸酒心館)の酒がすすむ。
「食材には作る人の人柄が出ます。仲良くなって、お互いのことを知るほど、料理の幅が広がります」と藤本シェフ。この日、淡路市の由良漁港から届いたのは2kgの鱧。「昔はもっと大きい鱧があがったそうです。大きい鱧は骨切りが大変だから、料理人は敬遠しますが、これがなかなか味がいいんです」と、鱧鍋に仕立てる。利尻昆布と焼いた鱧の骨でとったダシの旨みがたまらなくて、最後まで飲み干したほどだ。
この鱧は、由良漁協の仲卸「海幸丸水産」の橋本一彦さんからのもの。港にあがった魚に一番はじめに値段をつけるのが橋本さんで、そのほとんどは、東京の豊洲市場を経て銀座や赤坂の高級店に卸される。市場を経由すると調理までに2~3日かかるが、この店には採れた翌日に届くのだから新鮮さはお墨付きだ。
デザートは水ナスを使ったブリュレとタルトタタン。
水ナスを生産する「三浦農園」は100年以上続く泉佐野の農家で、昆虫の力を活用し、微生物や菌類を用いた環境にやさしい農法で栽培している。「大切に扱ってくれる人、大切に食べてくれる人に届けたい」と、これもまた採れたての新鮮なものが藤本シェフの元に届く。
「三浦農園」の水ナスは皮が薄く肉厚で味が濃い。それを焼いてピュレにし、カスタードクリームと合わせたブリュレは、砂糖はかなり控えめで水ナスのシンプルな味を楽しめる。タルトタタンも同様にしっかりと水ナスの味を感じられて、とってもユニーク。ソムリエが選んだオーストラリアのシャルドネのすっきりした味とよく合っていた。
ランチ営業もやっており、元高校球児で甲子園のマウンドにも立った祐太さんが担当。ハンバーグやチキンカツなどの料理に、大津市の「西九商店」からのコシヒカリが美味しくて、すでに近隣のワーキングウーマンたちに広まっている。席数が少ないので予約してから行くのがベターだ。
◆ MENU(税込)
日替わりランチセット1,200円
【ディナー】
シェフの気まぐれコース 11,000円~
日本酒「福寿」(グラス)880円~
グラスワイン880円~
◆ Data
北新地ふじもと
電話:06-6676-8566
住所:大阪市北区曽根崎新地1-7-3 北新地プラザビル8F
営業時間:目安は11:30~13:30、17:00~22:00。予約に応じて変動
定休日:日曜(予約は応相談)
◆ Writing / 松田きこ(ウエストプラン)
http://www.west-plan.com/
※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため対策した上で取材・撮影しています。
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